供述調書にサインする前に
納得のいかない供述調書にはサインしない。
場合によっては警察の(再度の)実況の立会いを求める。
これまで当事務所で最も多く経験した例が、被害者が入院期間中に警察から事情聴取を受けるケースです。警察は事前に現場を見て加害者から事情聴取も済ませ、ある程度事故(特に被害者側の落ち度)をイメージして入院先の被害者を訪ねて来ます。
これに対して被害者は、痛みがまだとれず寝たきりで先行き不安の病状、ただでさえ事故の記憶が乏しく曖昧です。現場を見ないで当時をイメージする不確かさ、プロの交通警察が言うのだから自分の認識記憶の方が間違っているのでは、間違っていれば後で訂正出来る、加害者も全面的に私が悪いと言ってたし、体もしんどいしとにかく早く済ませてしまえ、との思いから安易に警察の誘導に乗り供述録取書にサインします。
しかし、自分の記憶と異なる調書にサインしたら万事休すです。後の裁判で内容を覆すことは出来ません。
「当時は過失割合がこんなに重要な問題になると思わなかった。」「加害者が全面的に悪いと言ってたから、それで十分だと思っていた。」「あとで訂正できると思ってた。」
皆さんおっしゃいます。
しかし、裁判になれば、被害者の供述調書は事故に近接した最も鮮明な記憶に基づく被害者自身の不利益な供述として、認定法則上、最良の証拠資料とされます。
また過失割合は事故当事者が決めるものでなく、裁判所が決めるものです(事故の当事者に決めさせれば、謙虚な人ほど損をし、傲慢な人ほど得をするという司法機関として許容し難い結果になります。刑事被告人が、私は懲役10年に値する罪を犯したと言ったことを根拠に懲役10年を宣告する裁判所はありません。)
とにかく、自分の認識や記憶と異なる警察の誘導に乗った調書にはサインしない。これが重要です。
そして、怪我がある程度回復し現場に行けるようになってから、まず現場に一人で行ってみて、十分記憶を喚起しその上で警察に連絡し、現場検証に立ち合うようにして下さい。