交通事故に遭ったら:示談か裁判かの判断基準

示談か裁判かの判断基準

交通事故被害による損害賠償の請求を、示談で解決するのか、裁判によって解決するのが合理的なのか。
これについては以下のように整理出来ると思います。

裁判による解決が有益な類型

重度の後遺障害案件など、賠償額が多額となるケースがそれにあたります。
このような場合、通常、加害者側の呈示額と被害者側の請求額の差が大きくならざるを得ません。加害者が任意保険に加入しているケースでも保険会社には損害計算の内規があり、示談レベルではその内規を超える賠償額を呈示出来ないシステムになっています。
示談解決は早期に解決出来るメリットはありますが、通常、1億円以上の経済的損失を覚悟して示談解決することになります(『穂高の交通事故被害解決例』参照)。
被害者の過失割合が7割を超えるなど、その過失割合が余りに大きいときは賠償額が大きく減額されますから、弁護士費用を支払うことにより却って経済的に損失を受ける場合も出てきます。
弁護士と相談のうえ、慎重に検討することが必要です。

裁判による解決が有益な類型

当事者間で、事故態様(過失割合)、後遺障害の内容と程度、事故との因果関係ないし素因の有無と減額割合、などその主張内容に大きな開きがあり、両者とも一歩引かずに話し合いが平行線の状態になっているケースなどが典型例です。
このようなケースでは、両者とも一歩も退かないのですから、話し合いによる解決は不可能ですから、納得出来ない場合は裁判で戦わざるを得ません。
ただし、裁判をする場合は、証拠があって勝訴の見通しを立てることが出来る場合であることが絶対条件となります。

裁判か示談か微妙な類型

当事者間で、事実関係に対する争いはないが損害額に関する争いがあり、しかもその損害額の差が、弁護士費用を差し引いた被害者の手取り金額を考えると微妙な計算となってしまうケースがこれにあたります。
後遺障害のない傷害だけの案件か、後遺障害等級が14級の時によく問題となります。
このような場合は、経済的利益を重視するのかそれ以外のものを重視するのか、被害者の判断となります。
このような微妙なケースでは、手間暇はかかるかも知れませんが、被害者ご自身で下記機関に申立てをされ、そこで解決を図るのも一考に値します。
いずれの機関も、無料です。

  • 財団法人日弁連交通事故相談センターの示談斡旋
    http://www.n-tacc.or.jp/

    財団法人交通事故紛争処理センターの和解斡旋は、申立てが殺到しており、大変混み合っているため時間がかかります。
    申立てをした日から2カ月~3カ月後に第1回期日が指定されるのが通常です。解決には通常3回~4回の期日が必要となりますが、期日の間隔も2カ月以上になっています。
    そのため解決には早くとも半年はかかると見込んでおく必要があります。
    斡旋でまとまらずに審査手続きに移行したときは更に半年を要しますので、トータルで1年以上はかかると見込んでおいたほうがよいでしょう。

  • 財団法人交通事故紛争処理センターの和解斡旋
    http://www.jcstad.or.jp/

    財団法人日弁連交通事故相談センターの示談斡旋は比較的短期間で解決できます。
    知名度が低く申し込み案件が少ないことため、各期日の間隔が2週間程度で設定されます。実際、申立てをした日から、2カ月程度で解決するのが通常です。

慰謝料については任意保険会社基準より高額な裁判所基準で計算され、かつ、任意保険会社は財団法人交通事故紛争処理センターの和解斡旋に、JAや各種共済保険組合は財団法人日弁連交通事故相談センターの示談斡旋に、それぞれ従うとの取り決めになっています。
ですから、少なくとも入通院慰謝料については、他覚所見のないむちうち損傷や極端な隔日通院のケースでない限り、保険会社と個別に示談するより確実に賠償額がアップされる仕組みになっています。
ただし、いずれの機関も「当事者間に事実関係についての争いがなく損害評価だけに争いがあるケース」に限定しています。
当事者間に事故態様等の主張について対立があるときや、判断に高度の医療知識や自動車工学の知識を要するときなどは、申立ては受け付けられないことになっているのでご注意下さい。
そのような場合は裁判による解決を選択することになります。

交通事故に遭ったら
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