解決実績

事故当時11歳女児の脊髄損傷1級1号の事案で、過去の全判決例中3番目に高額の認定額、女性被害者では過去最高の認定額を上回る約4億300万円の総損害額を認める和解を獲得しました。

脊髄(頚髄)損傷・脳損傷後の四肢体幹完全麻痺 1級1号

加害者側主張金額 1億2071万2501円
UPした金額 2億8215万0000円
解決した金額 4億0286万2501円

UP率3.3

解決タイプ
裁判上の和解(H27.7.15)
属性
小学生(11歳)
等級主な傷病
脊髄(頚髄)損傷・脳損傷後の四肢体幹完全麻痺 1級1号
争点
将来介護費、自宅改装費
カテゴリ
脳・脊髄その他の神経症状

事案の概要

当時小学5年生の女児が通学中に2台の自動車の衝突事故に巻き込まれ、脳挫傷、頚髄損傷、多発骨折等の重傷を負い、左下肢大腿部切断、四肢体幹完全麻痺等となりました。

 

約1年5か月間の入院生活を経て自宅療養となり、事故から約1年8か月後に症状固定と診断され、後遺障害等級別表第一第1級1号と認定されました。

 

ご両親は、元気で活発な娘が突然、首から下を全く動かすことのできない状態になったことに当初は大変深いショックを受けられましたが、

お母様を中心として献身的にご本人の介護に努められ、できる限り自宅や学校、社会で充実した生活ができるように、既存の納屋を介護専用部屋に改築する大規模な自宅改装や車椅子ごと乗車できる福祉車両、あごで操縦できる電動車椅子等の様々な福祉機器の購入などの環境整備も行っておられました。

 

これらの自宅改装費用、介護関連費用を含めた適正な賠償を求めて、訴訟提起をしました。

 

訴訟では、自宅改装費、介護器具購入費、将来介護費等が主な争点となりました。

 

裁判所和解案の内容

裁判所は、

① 自宅改装費について約2000万円(請求額の全額)、

② 介護器具購入費(将来分を含む)について約3500万円(請求額の約7割)を認めたうえで、

③ 将来介護費については、上記の自宅改装、介護器具購入を考慮しても、介護者の負担は相当大きいとして、母67歳まで日額12000円、その後は日額24000円、合計約1億900万円(請求額の約8割)を認め、

総損害額(父母固有の慰謝料、既払い金、調整金を含む)4億円余りを認める和解案を提示しました。

双方当事者がこれに応じ、和解案のとおりの内容で和解が成立しました。

 

和解内容の画期性

一般的に費用が1000万円を超えるような大規模な自宅改装は、一部について必要性ないし相当性が認められないとか、家族の便宜にもなるといった理由で、全額が認められないケースが多いなか、今回の和解案では約2000万円の自宅改装費の全額が認められました。

この認定額を超える自宅改装費を認めた判決は、検索可能な範囲では過去に2例しか見当たりません。

 

また、介護器具購入費については、今回の和解案では約3500万円が認められていますが、これを上回る金額を認定した過去の判決例は見当たりません。

 

将来介護費については、今回の和解案の認定日額を超える日額を認定した判決例が非常に少ないとまではいえませんが、それでも裁判所基準額の1.5倍の認定額であり、上記のとおりの過去最高額かそれに近い額の自宅改装費と介護器具購入費が認められたうえでのものですので、これも画期的な金額といってもよいと思われます。

 

そして、今回の和解案の4億円余りの認定総損害額(既払い金控除前の総損害額。調整金等も含む。)は、過去の全交通事故判決例の中で3番目に高額の認定額(横浜地裁平成23年12月27日判決の約3億9700万円)を上回り、女性被害者の事例としては過去最高の認定額(大阪地裁平成19年1月31日判決の約3億4800万円)を上回っています。

※自保ジャーナルNo.1991掲載の「高額対人賠償判決例」による。

 

勝因

被害者の女性(和解成立時には17歳になっていました。)は、重い障害にも負けず精一杯充実した人生をおくろうと懸命に努力され、またご両親をはじめとするご家族もこの思いに応えるべく、できる限りのことをしてあげようという強い気持ちで日々の介護や環境の整備に尽力されていました。

その様子は、NHKの番組でも紹介されました。

 

このようなご本人、ご家族の現状を多角的な証拠と主張によってリアルに裁判所に訴えかけたことが、画期的内容の和解獲得のポイントになりました。