自賠責保険が頸椎捻挫で14級と認定した案件につき、脊髄(胸髄)損傷で5級相当の後遺障害を認める画期的な判決を獲得しました(大阪高裁平成27年4月23日判決)。
脊髄(胸髄)損傷 5級相当
加害者側主張金額 | 4542万0855円 |
UPした金額 | 7651万5598円 |
解決した金額 | 1億2193万6453円 |
UP率約2.7倍
- 解決タイプ
- 大阪高等裁判所(判決)
- 属性
- 男性アルバイト(33)
- 等級主な傷病
- 脊髄(胸髄)損傷 5級相当
- 争点
- 脊髄(胸髄)損傷の有無と程度、過失割合
- カテゴリ
- 脳・脊髄その他の神経症状
備考
民放2社によりドキュメンタリー特番として放映
事案の概要
麻痺の原因がわかったのは10年後!!
平成16年9月、当時33歳の青年が、原付バイクを運転中、普通乗用自動車にはね飛ばされ、路上にバイクもろとも転倒させられました。
青年は、この事故直後から自分の足の位置がどこにあるのか分からなくなり、歩行器なくして歩行できなくなりました。半年間入院して懸命にリハビリしましたが、最後まで症状はよくなりませんでした。
この足の位置覚消失は、脊髄後索障害の症状ですが、画像で異常所見がありませんでした。画像所見がない以上、自賠責保険は頸椎捻挫で14級の認定となります。
青年は、もともと機械体操で身体を鍛え、事故当時は、昼夜掛け持ちのアルバイトで60万円以上の平均月収がありましたが、事故後は足の位置覚を失ったことで、一人で生活することは出来ず、働けない身体になりました。
しかし、自賠責保険の14級の認定は、日常生活にも労働にもほとんど影響はない普通に生活も出来るし働けるとの認定です。
そこで、青年は当事務所に相談し、裁判所に提訴することにしましたが、一審は、画像所見という決め手となる証拠がない以上、自賠責保険とほぼ同様の認定でした。
控訴しましたが、裁判所を納得させるだけの決め手となる証拠は中々見つけることは出来ませんでした。
ところが、終結間際になって、とある知人の紹介の総合病院で精査したところ、頸髄でも腰髄でもない、胸髄の後索に大きな障害があることがMRIで判明し、事故後の青年の麻痺を中心とする症状は、胸髄後索障害で矛盾なく説明出来ることになりました。
事故から10年も経過していました。その10年間、ありとあらゆる病院を受診、検査しましたが、どの医師も胸髄に障害があるとは気がつきませんでした。審理の過程で、相手方保険会社側の医師からは詐病だと明言されました。
判決の内容
5級相当の後遺障害を認め、総損害として1億0500万円を認めました。
勝因
青年と我々との揺るぎのない信頼関係が勝因だったと思います。
胸髄後索障害は極めて稀な障害です。医学文献も臨床例も圧倒的に乏しく、10年間にわたって関係各医療機関が全く気がつかなかったことから、立証活動は困難を極めました。
我々がアドバイスした数多くの病院での検査も、決め手となる証拠は得られませんでした。それでも青年は、最後まで我々を信頼してくれました。そして、我々も、寡黙な青年の誠実さを肌で感じており、何とか力になりたいと思いました。それが、裁判終結間際ギリギリでの有無を言わせぬ画像所見の獲得に至ったものと思われます。
高度の信頼関係だけで言い分がとおるほどの甘い世界ではありません。裁判所が納得するだけの証拠なくしては、勝てません。しかしながら、高度な信頼関係なくしては、証拠の獲得に至らなかったことだけはたしかです。