6月4日、NPO法人おおさか脳損傷者サポートセンターが主催した設立記念講演会に参加しました。
同センターは『頭部外傷や病気による後遺症を持つ若者と家族の会』のうち大阪府の会員が中心となって、「『不慮の出来事』を『不幸な出来事』にしない」を合言葉に、主として、障害者本人やそのご家族の方に対して、各種の相談や支援に取り組むべく設立された団体のようです。今後のご活躍が期待されるところです。
さて、当日のテーマは、「高次脳機能障害のある人の地域生活を支えるには〜現状と今後の課題〜」というものであり、講師として、順に
- 大阪府立身体障害者福祉センター所長の鈴木恒彦医師
- 山口クリニック院長の山口研一郎医師
- 仙台白百合女子大学人間学部総合福祉学科助教授の大坂純氏
が、それぞれ講演をされました。
当事務所は、これまで、この種の講演会に数多く参加してきましたが、今回の講演会はその中でもかなり充実した内容になっており、得るべき情報も多々ありました。
講演を聴いていて感じたことは
たしかに障害者本人やご家族に対する支援は、従前の酷い状態に比べると確実に進歩している。
しかし、現状では、高次脳機能障害者とそのご家族が十分な支援を受けていると言うにはほど遠い、今後、気が遠くなるような多くの労苦を要する。
というものでした。
たしかに、平成13年4月から5年間に渡って実施された高次脳機能障害支援モデル事業は今年の3月末で終了し、一定の成果をあげたようです。
そして、4月からは、障害者自立支援法が施行され、10月からは、同法に基づき「高次脳機能障害支援普及事業」が実施され、障害者やご家族に対し適切な支援が提供される予定です。
このように、箱は、一応ですが出来ました(実はこの箱それ自体に問題があることについては、機会を改めて触れます)。
しかし、箱は、中身があってはじめて箱です。箱だけでは意味がありません。問題は中身です。数多くの問題が山積していますが、その中でも特に問題なのは、支援の実施機関である市町村内に、高次脳機能障害やそれにまつわる社会問題について豊富で深い知見のある支援専門スタッフが決定的に不足していることです。
例えば、医療による支援の限界を超えるということで、医師が市町村に相談するようアドバイスしたところ、紹介された市町村のスタッフから、「ここでは十分 な支援が出来ない。いい医師がいるから。」として、紹介した医師を逆に紹介されてしまった、という笑えない話しがあったようです。これでは、本人とご家族 は、途方に暮れているしかありません。専門スタッフの育成は一朝一夕で出来るものではありません。少なくない予算も伴う事業です。
まだまだ、当事者や当事者団体の自助努力が長期に渡って継続されざるを得ないようです。
最近、司法の世界では、サラ金に対する過払金返還請求訴訟が大流行しています。これは、利息制限法による利率を超えて貸し付けたサラ金に対して借主側が過払いの弁済をしていたとき、その過払分をサラ金から返してもらうという裁判です。
この、サラ金に対する過払金返還請求訴訟は、制度として今や完全に定着し、最近では、訴訟を起こさないまでも、弁護士がサラ金に対して過払金の返還を書面で請求しただけで、サラ金は、お金お返すようになりました。
しかし、このようになるまで、約20年の期間を要しています。それまでの間は、多くの借主とその弁護士が泣きを見 続けてきました。でも、各単位弁護士会(特に消費者保護委員会)は諦めずに、間断なく各種運動を継続し、ようやくにして、上記のような成果を得ることが出来ました。
今後、各種の当事者団体、民間団体の、諦めない継続した活動が望まれるところです。
穂高がすべきことは、これまでどおり、自賠責保険の後遺障害認定の呪縛にあって自賠責保険の認定の追認機関と化している裁判所に対し、高次脳機能障害の被害者本人とそのご家族が置かれている過酷な現状を精力的に開示して裁判所の呪縛を解き、被害者本人とそのご家族が適正な賠償を得ることのお手伝いを継続していくことにあると考えています。