第4 統合医療
1 はじめに
西洋医学と東洋医学など西洋医学以外の医療(代替医療)を統合する医療を統合医療といいます。
西洋医学的治療方法には限界があり、かつ弊害もあることを率直に認めた西洋医学の母国であるヨーロッパ各国で萌芽し、東洋医学を中心とした治療方法の安全性と治療効果に対する科学的検証が積極的にされました。
そして、やや遅れて1992年(平成4年)頃からアメリカでも研究がなされ、今では欧米だけでなく、東洋医学の母国である中国やインドをはじめとするアジ ア諸国、ひいてはWHO(世界保健機関)も加わった世界の各国において、東洋医学の治療が積極的に行われています(詳細は日本統合医療学会を参照下さい)。
※代替医療とは、要するに西洋医学において実践していない医療の総称で、いわゆる柔道整復、鍼灸、あん摩、マッサージ、指圧等の東洋医学の他、ハーブ療法、アロマセラピー、食事療法(粗食のことであり断食療法もこれに含まれます)、温泉療法、精神・心理療法、その他が含まれます。
2 統合医療の具体的な治療方法は、以下のとおりです。
統合医療の具体的な治療方法は、以下のとおりです。
(1)風邪
風邪の場合でしたら、下痢による高度脱水症状や高熱による脳障害など生命危機的な状況 の場合、その他、楽しい旅行中やどうしても外せない仕事等で、各種の諸症状を緊急に押さえ込んでおく必要が高い場合以外は、特別の治療はしません。食事を 控え、安静にしているだけという措置がとられます。ときに葛根湯が処方される程度です。
(2)アトピー性皮膚炎や発疹に対する対処法
アトピー性皮膚炎や発疹に対する対処法も、基本的に同じです。痒みや爛れで夜間寝れな いなど、よほどひどい症状でない限り、抗ヒスタミンやステロイド剤などの化学物質は投与せず、体内の排毒効果を促進するため、断食や食事療法(粗食)や温 熱療法(温泉療法も含まれます)、漢方薬などで、新陳代謝を促進し免疫力を高める方法が採用されています。
(3)癌
癌に対しても同様で、初期段階では、大量吐血や呼吸困難など激しい症状が出て日常生活に支障が出ることが真近に迫っている場合でない限りは、手術、放射線、抗ガン剤の投与といった西洋医学の三種の神器は使用せず
- 心理療法・音楽療法(リラックスによる免疫力の改善。副交感神経優位の生活を心がける)、
- 食事療法(粗食・断食)や運動療法で免疫力を向上させる、
- サプリメント療法(癌細胞のアポトーシス (自殺) 誘導の強いものや、腫瘍血管新生阻害作用のあるもの、腸内細菌叢を改善するものなどが組み合わせ)で治癒力を高める
- 温熱療法(高温で癌細胞が死ぬ原理を応用した治療法で、全身温熱療法と局所温熱療法とがあるとされているようです)その他、アロマテラピー・鍼灸・温泉療法などで、いずれも免疫力の向上を目指すものです。
進行したガン患者が憧れのエベレストを登頂した結果、癌細胞が減少したことはあまりに有名です(心理療法、運動療法、食事療法の効果でしょうか)。
(4)交通事故による外傷
交通事故による心停止、出血多量、各種臓器を損傷した外傷患者の場合は、前回で指摘した西洋医学の花形である緊急救命措置と外科的措置がとられ、一命をとりとめた後は、
- 感染防止のための抗生物質ではなくハーブ
- 術後のリハビリには、マッサージ、指圧、鍼灸など
- また、睡眠薬の代わりに、アロマセラピー
それぞれ利用されているようです。
コラム
現在、交通事故の被害者で、長期間にわたり慢性の神経症状に悩まされているが、画像や各種の理学的検査や生化学的検査といった西洋医学による診断基準や診察方法では、異常所見が認められないことから、
「異常はない」
「異常がないものは治しようがない」
「気のせいだ」
「歳のせいだ(歳だからしょうがない)」
「賠償神経症では・・・」(←賠償金が欲しい余り痛く感じる病気)
「いちど心療内科か精神科を受診してみては」
などと整形外科医から見放され、
自賠責保険の後遺障害の認定でも非該当となり、
裁判所も後遺障害の存在を認めない、
など、二重被害にあわれている交通外傷の被害者の方が少なくないと思われます。
しかしながら、西洋医学による診断基準や検査方法では異常はなくとも、東洋医学による診断基準ないし診察方法(例えば、切診や腹診)などによれば、「病、体表に現われる」の基本どおり異常が認められ、治療法もあることから、病を治すか、かなりの程度まで軽減させることは出来るようです。
しかし、東洋医学では事故との因果関係を科学的に立証することが出来ないことから、自賠責保険や裁判所により後遺障害が認定されないという問題は残ります。
今後、統合医療が進化していく中で、そのような問題が解決されることを期待して止みません。