第3 通院治療中の留意点 〜主治医の診断を軽信しない〜
以上のとおり、RSDは、その症状に個人差が激しく、各専門書で紹介されている臨床像にも相当なバラツキがみられ、確立された診断基準もなく、また症例も少ないことから、適格な診断が出来る医師が少ないことが専門医によって指摘されています。
そのことから、次のような両極端なケースが生じてきます。
一方は、RSDではないのにRSDと診断される場合です。自身の臨床経験からみて「少し治りが悪いなあ」と感じたら安易にRSDの診断を乱発する傾向にある、ことが専門医から指摘されています。
ですから、主治医のRSDの診断には安易には信頼出来ない事情があります。特に、ろくに問診も検査もせずにRSDと診断しておきながら、まともな治療をしようとしない医師の診断は信用出来ません。
他方は、本当はRSDなのに、気のせいだ、オーバーだ、賠償神経症((同じ怪我を自分の不注意で起こした場合は直ぐに治っている)だ、として治療の対象外として放置されるケースです。専門医からは、初期に放っておくと本当のRSDになってしまうこともあることから、RSDの疑いが生じたときは、過剰濃厚診療気味でもよいから、とにかく初期治療を徹底的にすることが良いとされ、現に早期治癒など治療成績も良い、との指摘があります。
以上の現状から、被害者からすれば、実に悩ましい選択を強いられることになります。
RSDだった場合は、初期治療の失敗から症状がどんどん重篤化して手遅れ状態となりますし、RSDでなかったときは、過剰濃厚診療を理由に加害者側から治療費の支払いを拒否されてしまうからです。
専門医が少ないだけに、このようなリスクを背負わざるを得ません。そして、この点については、目の覚めるような絶対的な解決策があるわけではありません。
では、どうすればいい?
結局は、ネット検索や医学書から、RSDの症状とその症状経過や他覚所見を知り、自身の症状にあてはめて自分の身体に聴いてみる他ありません。
症状の個人差が激しいとはいえ、少なくとも、通常ならば軽 快に向かう時期に、疼き・灼熱痛・さしこむような痛み・しびれるような痛み・電撃痛のいずれかの痛みが強烈かつ常時あって(自発痛)、それが治まるどころ か時の経過とともにどんどん増強しており、鎮痛剤がほとんど効かない状態のときは、ペインクリニック(麻酔科、神経内科)を受診しつつ、同時に、医師任せ にせず、腫れ、関節の固まり、皮膚の変色や温度の上昇、多汗、等について注意深く自己観察してみて下さい。全ての所見が出揃っていなくとも、何点かの所見が見られたときは、RSDだと決め打ちして、治療費が補償されるかどうかは別にして、自費を覚悟で治療することを優先して考えるべきだと思われます。
RSDだったときは、「地獄の病気」を体験することになるからです。治療費の補償を云々している場合ではありません。
また、RSDが見えくい障害とされ、診断に困難を伴い、見逃されやすく、早期治療を怠ったときは重篤な結果になることが専門医から指摘されていることか ら、過剰濃厚診療と判断されて治療費が賠償の対象外とされるケースはそう多くはないからです。